宛先: 文部科学大臣

部活がブラックすぎて倒れそう…教師に
部活の顧問をする・しないの選択権を下さい!

部活問題 対策プロジェクト(教師編)

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ある教師の声
「100連続勤務達成。2014年の休日は7日間でした。全ては部活動のせい。ストレスなのか疲れなのか、最近心臓がバクバクなって頭に血が上った状態になる。病院に行く暇は皆無。」

 日本の文化として,私たちの身近な存在である部活動。学生時代に,土日も祝日も部活動に懸命に打ち込んだ方も多いことと思います。

 今日の部活動は教育課程外の活動ですが,その教育的な効果を期待されるあまり,活動内容や教員の責任が拡大し,過熱の一途をたどっています。
 しかし,その部活動の指導は,教師のボランティアによって行われているという事実をご存知でしょうか。さらに,ボランティアであるはずの部活動の指導は全員顧問制度という慣習のもとに教師に強制されており,過重労働によって様々な不幸が起こっているのです。
 堺市で当時26歳だった熱血先生が過労死した事件は記憶に新しいことでしょう。

 とりわけ,朝練・放課後や土日の部活指導により教師は多忙を極めています。これにより,授業の質が低下したり,生徒と関わる時間が減少したりするなど,生徒に大きな不利益が出ています。
 このような状況で,安心して子どもを教師にあずけることができるでしょうか。

「部活で忙しくて授業の準備にまで手が回らない。もっと良い授業をしたい。」
「補習してほしいと言われても,放課後に教える時間すらない。勉強の苦手な生徒を助けてあげたい。」
「土日も働きづめで心身ともに疲弊し,生徒としっかり向き合って接する余裕がない。もっと生徒によりそいたい。」
 このように,部活動よりも本来の教師の仕事を優先させたいという情熱をもった教師も多いのです。
 だからこそ,放課後は部活指導ばかりに拘束されるのではなく,教師自身の裁量で使える時間が必要なのです。

▼文部科学省に求めること▼
学校の教師に部活動の顧問をする・顧問をしないの選択権を与えるよう,文部科学省が日本全国の教育委員会に指導・指示することを求めます。

【今後の予定】
 今後のキャンペーンでは,部活動が子どもも教師も輝くことのできるものになるよう,「生徒の強制入部の廃止の提言」「部活動の環境整備」などを文科省に要求していく予定です。 ぜひ,部活問題対策プロジェクトのホームページもチェックしてください。

提言 
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宛先
文部科学大臣 馳 浩 様
文部科学省 初等中等教育局 局長 小松 親次郎 様
文部科学省 初等中等教育局 財務課 課長 矢野 和彦 様
文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 課長 合田 哲雄 様
文部科学省 スポーツ庁 政策課 課長 澤川 和宏 様
文部科学省 文化庁 長官 青柳 正規 様
文部科学省 科学技術・学術政策局 局長 伊藤 洋一 様
中央教育審議会 教育課程部会 部会長 無藤 隆 様


 勤務時間外の部活動の指導を教員が強制されていることによって起こる様々な不利益を解消するため,文部科学省から日本全国の各教育委員会へ,教員に「部活動の顧問をする・顧問をしないの選択権」を与えるよう指導・指示することを求めます。

 部活動の顧問をする・顧問をしないの選択権を教員に保障していくにあたっては,新学習指導要領で部活動における教員の立場を明確化したり,部活動に関わる教員や部活動指導員の補充にあてる予算を拡充したりするなどのことをご検討ください。具体的には,下の ①~④に示すことを提案します。

①教育委員会が各学校に対して,以下のように指導するように,文部科学省は各教育委員会に指示してください。
「各学校長は,教員に次年度の顧問をする・しないの意思確認の調査を毎年行うこと。 その際,アンケート調査用紙を配布して教員に回答させるなどし,部活動の顧問を強制するような同調圧力が生じないように配慮すること。」

②新学習指導要領の本文または解説において,部活動は教員にとっても生徒にとっても自主的,自発的な参加によって行われるという位置づけにしてください(詳細は後述)。

③新学習指導要領の本文または解説に,教員の過重負担にならないよう配慮する旨を付記してください(詳細は後述)。

④現在「チーム学校」として推し進めている政策をさらに強化することで,部活動の顧問を希望しないもたない教員がいても,部活動の運営が成立するようにしてください(詳細は後述)。

▼ ②の提案の例
 現行の学習指導要領の本文または解説の「部活動」について書かれている文章の文頭に「教員と」という文言 を付記し,現行の「生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については~」の部分を,新学習指導要領では「教員と生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については~」として付記する。

▼ ③の提案の例
 「指導にあたっては,教員の過重負担にならないよう,個々の教員に顧問を担当する・しないの意思確認をとった上で,適切に配慮するものとする。教員が担当しない部については,外部指導者を招くことや社会教育に移管することなど,学校や地域の実態に合わせて運営の仕方を工夫するものとする。その際,チーム学校として教員の負担軽減策を講じるものとする。」という文言を新学習指導要領の本文または解説に付記する。

▼ ④の提案の例
 教育委員会には,十分な数の部活動指導員を学校に補充させる。そして,部活動指導員の権限を拡大し,顧問の教員がいない場合でも部活動指導員のみで練習・引率や大会への参加ができるようにする。そのためにも,各 教育委員会の権限において部活動指導員を雇用することによって,いかなる場所における事故等についても責任を各教育委員会に帰属させるようにする。

【上記の①~④の提案に関する留意事項】
A.各校長は,教員が顧問をするという選択をした場合には,教員が担当を希望する部の顧問に就任できるようにする。

B.教員が顧問をする・しないの希望調査は前年度に実施する必要がある。なぜならば,チーム学校として部活動指導員を補充しようとしている文部科学省の方針をより生かして運用するためには, 前年度の3月までには顧問の希望調査をとり,各学校の部活指導員の必要数を暫定的に確定した上で新年度を迎えられることが望ましいからである。

C.部活動顧問を希望する教員の数が少ないことによって,児童・生徒の課外におけるスポーツ・芸術活動の機会が奪われるようなことがあってはならない。部活動の顧問を希望する教員の数が少ないことは各校の校長の責任ではないので,校長が教員に顧問を依頼する必要はない。そこで,各教育委員会は,各学校と連携し,前年度の教員への顧問をする・しないの希望調査をもとに必要となった部活動指導員の数を確保し,児童・生徒に部活動の機会を保障する必要がある。

<部活動指導員を確保する手段の例>
一.各教育委員会は,人材募集の広報活動を行い,広く部活動指導員の確保に努める。
二.各教育委員会は,各学校と連携を図り,各学校の地域人材から部活動指導員を登用するように努める。地域や各学校の実態に合わせて部活動指導員の確保を図るようにする。
三.部活動指導員になりうる人材を例示するとすれば,地域の関係者,保護者,卒業生,教員志望の大学生,教員OB・OGなどが挙げられる。

D. 部活動指導員を活用するに当たっては,児童・生徒の健康および安全管理に十分な配慮を行えるようにするものとする。例えば,部活動指導員が児童生徒に,過剰な長時間練習をさせたり,休養日を設けずに連日に渡って練習・大会に参加させたり,体罰を行ったりするなどのことがあってはならない。また,各種部活動ごとに発生しやすい外傷・障害・死亡事故などには特徴がある。これらのことから,教育委員会は指導者のための講習会を企画し,認定講習として受講を義務化することで,部活動指導員が専門家の知見を活用して十分な安全管理や生徒の心身の発達をふまえた指導を行えるようにする。部活動の指導が適切なものとなるよう,文部科学省からの指示で,各教育委員会の責任のもと,校長は部活動指導員の管理および監督・指導を行うものとする。部活動を指導する教員についても,部活動指導員と同様に安全管理に十分な配慮を行えるようにする。
 また,十分な安全管理や専門的指導が期待できる部活動指導員や顧問を確保するためには,部活動指導員や顧問に対して一定水準以上の賃金の支払いが必要となる。(予算の拡充の必要性についてはHを参照のこと)

E.あってはならないことであるが,部活動指導員の数を十分に補充・確保できず,新年度から部活動運営が不可能となりそうな場合には,保護者を含め地域の人材を積極的に登用することによって,運営を代替できるようにする(以下,「代替運営」と表記)。その際,運営に伴う事件・事故などの責任は各教育委員会に帰属するものとする。代替運営は,スポーツ・芸術活動の指導力や専門性を十分に保障できない点で,部活動指導員よりも質は劣るものの,その役割への手当は各教育委員会から支給されることが望ましい。

F.代替運営となってしまった場合には,スポーツ・芸術活動の専門的指導にもとづいた運営が困難となる。そのため,特にスポーツ活動においてはケガ・事故が起きないように安全管理への配慮が必要である。代替運営は,部活動システムとして万全ではないので,各教育委員会は積極的かつ迅速に部活動指導員を補充・確保するものとする。

G.離島や過疎地については,地域住民の数が少ないため,各教育委員会には,部活動指導の人員確保に特に留意させること。

H.これまで部活動は学校において,ほとんど無償で児童・生徒に提供されてきた。部活動は,保護者の所得に関わらず,児童・生徒がスポーツ・芸術活動に親しむ機会を保障してきた点で意義が大きい。このような部活動の意義は,国内外から認められている。そのため,部活動指導員に充てる財源の確保は,保護者の私費ではなく,公費に求めることが望ましい。
 これまで学校が部活動として無償で提供してきた「課外のスポーツ・芸術活動」を今後も国民が必要とし,日本 の教育政策としても部活動に意義を認める以上,それは価値のある活動であるといえる。価値ある活動を保障するためには,費用が確保されて然るべきである。これらのことから,教育に充てる財源の確保が必要であることは明白であり,日本の行政は,教育予算を今まで以上に拡大していく必要がある。

I.現在,全国的に,部活動の顧問は教員が担って当然という認識が広まっている。これにより,顧問の教員へ の要求が大きくなり,過重な労働が誘発されている。これを防ぐために,教員に部活動の顧問をする・しないの選択権がある旨,および,児童・生徒に課外のスポーツ・芸術活動を保障していくための様々な施策について,文部科学省はホームページやマスメディアを通じて広報することが望ましい。また,校長は,保護者・児童・生徒へ同様の説明を毎年する必要がある。

【教員に部活動の顧問をする・顧問をしないの選択権を与える必要性について】
  ご存知の通り,学校では教員の勤務時間を大幅に超えて部活動が行われているという実態があります。さらに,勤務時間外の部活動の指導は,事実上,教員に強制されています。部活動の顧問をもつ多くの教員の1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超えており,過労死する恐れがあります。
 そして,長時間に およぶ部活動の指導によって教員が疲弊し,授業の準備ができない,学級や授業で担当する児童・生徒に向き合う余裕がないなど,本来の職務にも支障が出ており,児童・生徒にも大きな不利益が生じています。教育課程外である部活動が,教育課程内の職務や児童・生徒の権利を大きく圧迫しているのです。

 文部科学省は,部活動指導について「校長から出された『部活動の監督・顧問』という職務命令によって命じられた付加的な職務」,「正規の勤務時間内で実施すべきもの」とホームページ上に明示しております。しかし,同じく文部科学省の定める年間の授業時数を守りながら,部活動を勤務時間内に収めようとすると,部活動は平日1日あたり10分程度しか実施することができません。部活動を勤務時間内に収めることが現実的でないため,部活動はやむを得ず教員の勤務時間を大幅に超えて日常的に行われています。
 このことから教員に部活動の顧問を職務命令することは,実態として勤務時間を大きく超える残業・休日出勤を教員に強制することに等しく,黙示の残業命令として給特法に違反していると指摘できます。このことから,教員に部活動の顧問を職務命令するという行為は問題です。

  また,教育委員会の方針などにより,校長が部活動の顧問を教員に職務命令していない学校も多くあります。しかし,「全員顧問制度」や「複数顧問制度」などといった慣習のもとに,事実上,教員は部活動の顧問と勤務時間外の指導を命令されているに等しい状況にあります。「部活動の顧問をしなければならない」,「勤務時間外の部活動の指導をしなければならない」といった風土の学校が大多数です。
 そして,部活動の活動日や活動時間を顧問の裁量で決めることも非常に困難な状況です。前任者の前年度までの方針や,地域・保護者からの要望などにより,膨大な時間の部活動の指導をせざるを得ない場合も多々あります。

  以上のことから,各教育委員会や各学校任せの状態では,部活動の顧問をもつことによって生じる,教員への勤務時間外の部活動の指導の強制は是正されません。是正のためには,文部科学省が各教育委員会に指示・指導し,各学校において「部活動の顧問をする・顧問をしないの選択権」を教員に保障していく必要があります。

 教員の人権を守るために,また,教員から児童・生徒が享受すべき部活動以外の本来の権利を保障するために,教員に「部活動の顧問をする・顧問をしないの選択権」を与えるよう文部科学省が各教育委員会に対して早急かつ積極的に指導することを求めます。